私は、日本画を描く上で、和紙に大変お世話になっています。
今回はその和紙について、あまりにも知らない事が多いので、日本画材料学で学んだ事を中心にまとめてみます。
私は徳島県出身なので、有名な阿波紙もあり、文化と自然と美しい水がある所には、和紙を作る文化があるように思いました。しかし、残念な事に日本では、和紙離れが進んでいます。
私はこのような日本の文化を、作品を作り続ける事で継承して行きたいと思っています。
和紙は原料として、楮・三椏・雁皮の靭皮を主に使用しています。
和紙は原料として、楮・三椏・雁皮の靭皮を主に使用しています。
楮は、クワ科の落葉低木で成木は3メートルになります。日本の大部分の地に自生し、栽培が簡単で、毎年収穫出来るため、原料として多用されています。
主に高知県、茨城県、山口県で栽培されていましたが、現在では、樹皮の原料はほとんど輸入に頼っています。
表皮の繊維の特徴は、太く長く強靭です。
楮紙の種類には、美濃紙(岐阜県)・薄美濃紙(岐阜県)・細川紙(和歌山)・石州紙(島根県)・版画用紙などがあります。
石州紙には、その昔、大阪商人が火事の際に石州半紙の帳簿を井戸に投げ込み、その後、引き上げて使ったという逸話があるくらいの強靭さがあります。
三椏紙は、ジンチョウゲ科の落葉低木で中国から江戸に伝来し、成木は2メートルになり、収穫は3年ごとにされています。ジンチョウゲは、芳香がよく薬草にも使われ、害虫にも強く、主に岡山県、高知県で栽培されています。繊維の特徴は、細く短く、光沢があり緻密で弾力性があり耐伸、耐折があり、局納三椏として、紙幣としても使われています。
三椏紙の種類には、鳥の子紙(岡山)箔合紙(岡山)があります。
箔合紙とは、金箔や銀箔の下に引かれている、薄い光沢のある紙です。その紙を漉いている場所が、日本にただ一軒ありました。それが、岡山県の津山市です。なんと、夫の実家の近くでした。
こんな映像があったので添付しておきます。
私は、箔を使った後、箔合の紙が美しすぎて、保存しているのですが、まさにこんな芸術品だなんて!
と感動します!
続いて、雁皮紙ですが、雁皮紙は、ジンチョウゲ科の落葉低木で、日本の南半分に自生し、成木は2メートルになります。
繊維の特徴は、細く短く、半透明で絹のような光沢があります。湿った状態でも、強靭で謄写版原紙用紙などや、版画にも利用されています。
雁皮紙の種類には、鳥の子紙(岡山)雁皮紙(滋賀)などがあります。
麻紙は、大麻や苧麻などを原料として作られた紙で、紙の中では最も古いもの。
和紙の主原料は、楮・三椏・雁皮の他に、麻紙があります。
麻紙は、大麻や苧麻(ちょま)などを原料として作られた紙で、紙の中では最も古いものと言えます。
原料になるのは、大麻は、クワ科の一年草で繊維が強靭なため糸や布や網にも加工され使用されます。苧麻(ちょま)はカラムシというイラクサ科の多年草であり、靭皮繊維の中でも最も強度があり、白く光沢があります。亜麻はアマ科の一年草で柔軟性と光沢があり、麻は山野の至る所で収穫出来ますが、処理に時間がかかります。
時代の流れの中で絵の具を厚塗りすることが多くなり、それに耐えるものとして麻を利用した紙の復興が望まれ、要望に答える形で出来たものとして、福井県の岩野平三郎さんの、漉いた雲肌麻紙がよく知られています。
私が使っている紙も、雲肌麻紙です。
混合した和紙も作られている
混合した和紙も多くあり、楮、三椏、雁皮、麻、パルプなどを原料に様々に混合して漉かれています。混合した和紙の種類には、雲肌麻紙、白麻紙、土佐麻紙、(楮+麻)
鳥の子紙1号、藍紙(雁皮+三椏)など多数あります。
また、地域の漉いている工房で、独自の混合和紙が作られています。
以前は、描き手が自分に合う紙を職人に作ってもらっており、画家の名前が多く付けられていました。
作品を作る前から、多くの人の努力のもとで作られている和紙です。
私の手元に届くまでに、どれ位の時間がかかっているでしょう。
そう思うと、一枚一枚を大切にして、心を込めて作品化にしていかないと、作ってくださった方に失礼ですね。
日本画材料学は、私に深い気づきを与えてくれるものでした。
今度、実家徳島に帰省するので、阿波紙の紙漉きをして来ようと思います。
また、そのレポートもしてみたいと思います。
参考文献
重政啓治 神 彌佐子 星晃 和田雄一著『日本画の用具用材』武蔵野美術大学出版局2010年