イメージはどこから来るのでしょうか?

Blog

          

 赤い色を見た時に、なぜ人によって持つイメージが違うのでしょうか?その持ったイメージは一体どこからくるのでしょうか?私は絵を描いているので、良く「イメージ」という言語を使いますが、一体イメージとは何なのでしょうか?イメージについて考えてみました。

音から来る形や色の対応関係

 耳から入って来る音に反応して想像することはありませんか?私は、好きな音楽から映像が浮かんで来ます。私は抽象的な色の重なりをイメージする事が多いです。音や図形の対応関係には、性別や文化を超えて共通性が認められています。プーパ・キキ効果と言えるもので、音や図形が特定のイメージを持つことを表しています。

 ポケモンの進化レベルが高いものほど、名前に含まれる濁音の数が増えます。濁音が増えるほど強そうなイメージをもちやすいからだと考えられています。
 日本語は擬音語、擬態語の種類や使用頻度が多いと言われています。感覚を直感的に伝えることが出来る表現です。

色のイメージの影響

 テコンドーやレスリングでは、青色の服を着ている選手に比べて、赤色の服を着ている選手の方が、勝利しやすいとされています。赤色を身に着けているほうが、審判に有利に見える可能性や、赤色に相手を委縮させる効果があります。萎縮効果の影響は、思考能力にも関係があります。

文字形態の影響

 丸みをもったフォントは、角ばったフォントに比べて、どの国でも甘く感じられ、スペイン語や英語では、角ばったフォントは丸いフォントに比べて、苦く、塩っぽく、酸っぱいと感じられています。以前グラフィックデザイナーだったので、タイポグラフィーの重要性を痛感しています。現在は書道を習っているのですが、かな文字の連綿を書いていると、心情と文字があいまって、平安時代の繊細な芸術を体感しています。

色の好き嫌いのイメージは、経験に結びついている

 生態学的誘発理論では、色の好き嫌いのイメージをその色に結びついた出来事の印象としています。 私は郷里の徳島で、子どもの時に見た夕焼けがあまりに美しく、幻想的だったので赤の色を見ると、夕焼けを思い出し心が暖かくなります。しかし、音で「アカ」を聞くと、高校時代の数学で赤点ギリギリで苦しんだ経験から、音の「アカ」は苦手。という経験から結びついているイメージがあります。

進化的遺伝による影響

 進化的遺伝によるイメージを持つ物としては、ヒヒなどの霊長類の中には、身体の特定部位の赤色の濃さやその部位の大きさが群れの中で順位を示すという研究があります。色が特定のイメージと結びつき、人に限らず多くの種で、コミュニケーションの基盤として、利用されています。 

 また、人が顔に敏感なのは、集団生活を送るのには、他者の表情を理解することは、重要であり、子どもを残すうえでも、顔から大人と子どもを識別して、子どもには共同で援助を与えることが必要であり、幼児性の高い顔は「カワイイ」という印象を引き起こし、援助などをしてあげたくなる事が知られています。

文化的象徴による影響

 シンボルの役割は、宗教画を中心とした西洋絵画において意味があり、イコンとして必要でした。企業ではロゴですね。一目みて理解出来て、理念も認知出来る様なイメージを持たせる働きです。また、特定の物「ミッキーマウス」などには楽しさに繋がるという、思惑が物や生活の中に自然に入っています。メディアによって様々なものが意味づけられ、みんなに共有されていると考えられています。

イメージ全体のまとめ

 イメージは耳から入って来た音もありますが、眼による形態の印象、色、遺伝による本能部分、文化的象徴など、眼の働きが大きいことが分かりました。そして、知らず知らずの内に多くのメッセージが生活に入っており、私たちは自然と取捨選択をしています。

 都心で暮らす私は、人の思惑の中でさまよって暮らしている様にも思いました。また、年を重ねるという事は、見ている視覚のレイヤーが増え続けており、濁る時間が増えている様にも感じます。子どもの時のすっぴんの状態に受けたイメージは大変強く残り、感性豊かな20歳前後に見たり経験した事もイメージとして残り、作品を制作する上で重要な要素を含んでいるように思います。

 現在は、多くをWEBで見る事が出来るので便利な時代になりました。このように発信が出来る事は良い事ではありますが、触感や味覚や嗅覚と言った眼には見えない感覚を、美しく見える形に表現して行く事が、私の大事にしたい事だと気付くことが出来たイメージと心理学の考察でした。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

参考文献編者 荒川 歩『はじめての造形心理学 心理学 アートを訪ねる』(新曜社2021年)