私の中には、二つの脳があるように感じています。
バルセロナや東京のような都市に惹かれる脳は、
建築や新しい文化、表現に心を躍らせます。
常識を少しだけずらし、未来を見ようとする脳。
一方で、スリランカや徳島に安らぐ脳は、
人の温もりや自然、ゆっくり流れる時間を愛しています。
「ただそこにいること」の豊かさを知っている脳。
私は、そのどちらかではなく、
その二つを行き来することで、自分らしくいられるように思うのです。

今回、スリランカでシーギリア・ロックに登りました。
ここは5世紀、父を暗殺し、弟を恐れたカーシャパ王が築いた岩山の宮殿です。
約11年間、この地を治めたと伝えられています。
切り立った巨大な岩を登りながら、
私の頭に浮かんだのは、
「どうやって食料や資材を運んだのだろう。」
ということでした。
山頂は風がとても強く、吹き飛ばされそうになります。
ここから見える景色は、
天下を手にした王には、どのように映っていたのでしょう。
満たされた景色だったのか。
それとも、誰も信じることのできない孤独な景色だったのか。
そんなことを考えながら、私は風の中に立っていました。

恐怖から生まれた権力や行動は、長く続くものではないのかもしれません。
やがてカーシャパ王は、インドから攻めてきた弟モガラーナとの戦いに敗れ、自ら命を絶ちました。
そして、この宮殿もまた、王の死後約1400年もの間、歴史の中に埋もれていきます。
再びその姿が発見されたのは、19世紀後半のイギリス植民地時代。
初めてこの場所を見つけた人は、どれほど驚いたことでしょう。
都市が生み出す創造性。
自然が包み込む静けさ。
その両方に心を動かされる私は、今回の旅でも、自分の中にある二つの脳を行き来していました。
そして、歴史が教えてくれる教訓を身を持って知ることが出来ました。
旅は、今の私には欠かせないものなのだと感じています。

