父のアトリエ

父が老いて行く様子が、父のアトリエにとても似ていたので、残しておきたいと思い描いていた。
そんな時、父は急に亡くなってしまった。
去年の今頃は生きていて、一緒に実家でご飯を食べていた。
「施設に帰りたくない!」と言っていたが、「私が困る」と言って何度も喧嘩をした。
60歳で定年退職後に、多くの作品を作っていた父と、同じ位の年齢になった。
徳島のアトリエで、同じ風景を見て、デッサンをして絵を描いていると、父の思いが蘇る。

父は手を動かす事が好きで、ICUで塗り絵をしている位だった。

まったく、公募展に出す予定ではなかった。しかし、額には入れており、行き場がない私的な版画が箱に入ったままで可哀そうに思ったので、出してみた。ただそれだけ。

その作品が入選出来た。
残したい、描きたい、木炭紙に鉛筆でドローイングをして、放っておいたが、何を思ったのか?コピーをしたら、面白い事に気が付いてまた放っておいた。
プリントスクリーンの課題で、これを使ってみようと思い、町田版画美術館で制作を始めた矢先だった。最後の一版は、葬儀後に刷った。

私はプリントスクリーンの高度な技術は持っていない。
ただ、あまり叙情的にしたくない。辛く悲しい事を、
カラッと制作したい。悲しいのに、明るい陽射しのような絵が作りたい。と思っていた。

私の絵は伝わらない事が多く、実力不足を感じていたが、今回は誰かが分かってくださった。
少し、同じ思いを共有できたようで嬉しい。

芸術好きな父を東京都美術館に連れて来れて本当に良かった。
急に思い立って、応募して本当に良かった。
お父さん。ありがとう。